子供が勉強用にコンピュータを欲しがっているけれど、結局ゲームしかしないのではないかと心配

概要

“勉強用”という点が不明瞭ですが、お母様がコンピュータを扱うことができず、お子様の言う「勉強」が何を指しているのかということは不明で、必要かどうかも判断できないというご相談をお受けしました。

お子様がゲーム好きであることから、コンピュータを手に入れたらゲームばかりするのではないか、とのご懸念です。

ゲーム自体は悪くないけれど

ゲームは少なくともテレビを見ているよりは脳を使いますし、発展的です。 コミュニケーションスキルや言語スキルが磨かれる場合もありますし、ゲーム自体を否定的に考える必要はありません。

しかし、過剰にのめり込んでしまい、他のことが手につかない(寝食も)というのは確かに憂慮すべきことです。

“ゲームに対する姿勢と折り合いの付け方”という問題と絡みますから、このようなテクニカルな回答は二次的なものなのですが、「コンピュータを手にすることで良好な取り組みが得られるか不透明な中で高価なコンピュータを購入するのにためらいがある」ということに対する回答になります。

実は「ゲームに向かない、性能は低くないコンピュータ」は難しくない

コンピュータの基本的な構成要素の中で、完成品販売されているものとして性能指標に使えるものは

があるのですが、ゲーム用コンピュータの場合、このほかに「ビデオカード」というものが重要になってきます。

「グラフィックスカード」や「GPU」などと呼んだりもしますが、これは「画面を描くための計算をして、画面につないで画面を描くためのもの」です。

最近の一般向けのパソコンでは、ビデオカードCPUに内蔵されていますが、ゲームではこのビデオカードの性能が非常に重要であり、同時に高性能なビデオカードは非常に高額な部品でもあります。

そのため、ゲームを快適にプレイするためには、性能の良いビデオカードを搭載する必要があります。 しかし、事務用途を想定したようなコンピュータではもちろんそのような高性能なビデオカードは搭載されません。

最近のCPUに内蔵されるビデオカードはそれなりに高性能で、ゲームも「できる」のですけれど、あまり快適ではありません。

そのため、ゲームをやりこむのであれば、高性能なビデオカードを搭載したコンピュータを欲することになるでしょう。 ゲームはそれ以外の部分においても高い性能を必要とするため、事務用途のコンピュータではとても足りない状況が発生します。

実のところ、プログラミングやコンピュータの一般教養のために必要なコンピュータの最低限の要求性能はあまり高くありません。 「入出力デバイスにはお金をかけたほうがいい」ということは言えますけれど、コンピュータ自体はあまり高性能なものである必要はないのです。

このような場合、あまり高性能でない、特に特別なビデオカードを搭載しないコンピュータを使用させることで、「ゲームばかりするにはストレスがたまり、その活用が問われる」という状況が発生します。

なお、コンピュータグラフィックス、特に3D CGや動画編集に関するコンピュータへの性能要求はゲームのものにかなり近くなり、そのような勉強をしたい場合にはこのような区別は困難になります。

もうひとつの方法として、単独のキーボードが必須となるデスクトップ・コンピュータにして、キーボードに「キーの同時押しがきかないもの」を選択するという方法もあります。 ゲームの場合キーボードのキーをいくつも同時に押すことになりますが、文字打ちでは通常「複数のキーを押し続ける」ことは必要とならないため、キーボードによっては複数のキーを押し続けることができなかったりします。 このようなキーボードを使わせることで、そもそもゲームができない環境をつくることもできます。

ベストプラクティスは「より良いものを買うこと前提」

パソコンの価格帯は3万円から40万円程度、ワークステーションまで含めると本体上限は200万円ほどで、周辺機器も含めるとさらに高額になります。 一般的には2018年現在では10万円台という認識の方が多いですし、おおよそ正しいと言えます。

私が使っているコンピュータはラップトップ(=ノートパソコン)が15万円程度、デスクトップ(デスクトップワークステーション)が60万円程度です。 デスクトップのシステム一式になると+15万円程度ですね。

どちらも「そこそこ良いもの」を使っており、ラップトップはそれなりに誰しもメリットのあるものですが、 デスクトップワークステーションに関しては普通の人ではその価値を引き出すのは難しいでしょう。 性能をフル活用するにはテクニックや知識も必要で、ある程度以上の性能になると体感的な性能はまるで変わらないという状況が発生します。

もちろん、技術が向上すれば高性能なコンピュータを活用し、よりストレスなく、より効率的に作業が可能になりますが、最初からそのような状態である必要はありません。

「ゲームしかしないのではないか」という懸念が強いのであれば、最も良いのは「実際に勉強し、しかも実力がコンピュータの性能を追い越したなら、実力にあったコンピュータに買い換える」という約束のもと、まずは「安価で最低限の性能は満たすコンピュータを与える」という方法です。

本当に向上を望んでいるかもしれないお子様に一方的に譲歩を強いるのは適当ではありません。 「ゲームしかしない可能性が高い」と考えているのであれば、新しいコンピュータを約束したところで、そのコンピュータを購入する機会は訪れないということになります。 本当にそのように考えているのであればこの約束を恐れる必要はありません。

逆にお子様が本当に努力を重ね、「最低限の性能を満たすコンピュータ」ではとても足りないところまで成長したならば、その努力と成長を讃え、実力に見合ったコンピュータを与えるべきでしょう。 その場合に暫定的に買ったコンピュータが無駄になるように思えるかもしれませんが、

といった理由から、それほどもったいないということもありません。 ある程度の無駄が出ることは、お子様を育てる上では仕方のないことで、お子様への投資が100%報われるわけはないので、お子様自身が自分にあったもの、可能性を追求できるものを見つけるまで全くの無駄になってしまう投資をすることも仕方のないことです。 そのことからすれば、ちゃんとその成長を支え役に立っているのですから、無駄の範疇にも入らないと考えるべきでしょう。

「家族共有で」というのはやめたほうが良い

ありがちな、「ちゃんと使うかもわからないのに買い与えるのはもったいないので、家族共有にする」という方法は、とても悪い方法です。

チャレンジ、成長のためには、「自分の管理下にあって好きなときに好きなように使うことができ、使うこと自体にとやかく言われることもなく、たとえ壊したとしても自業自得であって責められない」という条件は欠かせないもので、 そのような利用制限のかかった状況ではもしろ成長を阻害し、あとあとになってもリテラシーが形成されないような事態につながります。

安心感と保険のためにそのような選択をとりがちですが、やめましょう。

安価なら良いわけでもなく

最近のコンピュータは高性能化しているため、安価なものでもそれなりの性能を発揮しますが、やすければOKというわけではありません。 以下は2018年1月現在の指標です。

CPU

CPUは次のような構成です。

Intelの場合、性能の高い順に

このほか特殊なものとして、Core mとAtomがあります。 AMDの場合、性能が高い順に

これ以外のAMD製CPU(APU)を選択肢に入れるべきではないでしょう。

IntelCPUの場合、Pentiumであれば通常の使用には十分耐えるはずです。 バリバリ使うには物足りないのですが、ビデオカードの性能も控えめで、試しに買い与えるにはちょうど良いかもしれません。 ただし、販売されているものがあまりありません。

Celeronでも事務用途には十分ですが、性能は低く、Celeronの性能限界に到達するのはそれほど難しくありません。 そのため、ちょっと視野が狭すぎる話になるかもしれません。

Core mはかなり高い性能を持っています。 Core mはそもそも持ち歩くことを重視して、バッテリーもちが良いように省エネ化されたものですが、性能自体もラップトップ用Core i3と同等以上にはあります。1

Atomは様々な支障が生じる可能性が高めなので、推奨できません。

AMD製CPUは、A4になるとちょっとストレスフルです。 会社で大量に導入する事務用コンピュータとしてはありかもしれませんが、普通に使っていても限界には簡単に到達します。 Celeronよりももっと推奨できません。

A10というのは悪くない選択肢だと思いますが、AMDのAシリーズに関してはビデオカード性能がIntel製のものよりもよく、ゲーム支援機能もあり、Ryzenに至ってはCPU内蔵のものより高性能な単独のビデオカードが必須となるなど、ゲームに適した環境になってしまいます。

Celeron / Pentium / Core i3あたりで検討するのが無難でしょう。

メモリ

メモリーは安価なものだと4GBということが多いのですが、4GBだとごく普通の操作に対して不足して応答が悪くなる場合が少なくないため、できれば8GBはほしいところです。 ところが、8GBモデルだと全体的に性能が高く価格も高いモデルでなければ選べない、ということがよくあります。

ひとつの解決策として、ものによっては単体で販売されているメモリーモジュールを追加/交換して増やすことができるものがあります。 コンピュータを分解したり、組み立てたりする必要がありますが、「それができるだけの技術を身に着けたらメモリーの追加/交換も視野に」という考え方もありでしょう。

なお、2GBは今時のスマホよりも少なく、使い物になりません。

ストレージ

大量のデータを取り扱うことを目標としているのでなければ、「巨大なストレージを埋め尽くす」というのはあまりよくない傾向です。 ひとまずはほどほどのサイズに限定したほうが良いでしょう。 デジカメやCDなど、様々なデータが集まってくればより大きなストレージに移行していくのが良いと思います。

HDD(ハード・ディスク・ドライブ)は低価格で大容量ですが、故障しやすく(データを失いやすく)、また低速です。SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)は高価格なのに小容量ですが、故障に強く、高速です。体感的な速度への影響か大きく、おおよそ120GBから260GB程度のSSDからはじめるのがおすすめです。2

形状

タブレットであることが主軸になった「キーボードを外せるタイプのラップトップ」はおすすめできません。 利用が限定される可能性があります。

ラップトップ or デスクトップ

大学生なら迷わずラップトップでしょう。 卒論が学校などでも進められます。

デスクトップ・コンピュータは性能が高い傾向があり、必要なものも増えるので、お試しならラップトップがおすすめ、逆に本格的に取り組むのならばデスクトップのほうがおすすめです。

インターフェイス機器は惜しまずに

ある程度の取り組みをしてきたならば、キーボードマウス、ディスプレイなどへの出費を惜しまないようにしましょう。

キーボードは数百円のものもある中、2万円近いようなものも少なくありません。 そして、キーボードにこだわる人は理想のキーボードを求めて高額なキーボードを多数試していたりします。

プログラマやライターであるならば、キーボードにはこだわるべきです。

マウスは、ゲーム用のマウスが非常に多くのボタンをもつ特殊なものになっています。 これはあくまでゲーム用ですから、必要ではないでしょう。 性能の良いマウスはゲームにも適したものになりますが、作業効率にも関わります。 しかし、キーボードと比べてその影響は限定的であり、技術が向上するとマウスに頼る割合は減っていくため、マウスはそこまで重要なわけではありません。

ディスプレイは作業効率に直結します。 必ずしも高額なディスプレイが必要というわけではありせんが、「勉強」というよりも「生産」の段階に到達してきたならば、十分なディスプレイはかせないものになるでしょう。 現在手軽に構築でき、効果の高いものは、「大きめ(24から32インチ)の4kディスプレイ1台」というものです。

おすすめは? (2017-2018冬)

Lenovo ThinkPad E570

E570はThinkPadシリーズのエントリーモデルです。

低価格で、作りはほかのThinkPadと比べて簡素なものとなっていますが、キーボードのうちやすさなどTHinkPadイズムはしっかりと反映されています。

ThinkPadシリーズはインターネットでのオーダーメイドモデルであり、使用する部品を選択することができます。 クーポンが発行されることも多いため、クーポンとの兼ね合いもありますが、Core i3-6006Uプロセッサと8GBメモリーの組み合わせ、液晶はフルHDを選択というのがおすすめです。

Lenovo ipeadpad 320

Lenovoにはideapadシリーズもあります。 ThinkPadほど特別に優れたものではありませんが、とても安価なので試しに使ってみるにはよいかもしれません。

Celeron N3350プロセッサに割り切ってしまい、メモリも4GBにして「ちゃんとはじめることができるか」を問うのは悪くない選択肢かもしれません。 すぐに卒業してしまうかもしれませんから、その後の使いみちも考えておいたほうがいいでしょう。

DELL Inspiron15 3000

これもおよそideapadと同じ内容です。

Lenovo ThinkPad 13

論文を書いたり、文書を作ったり、実用的な目的で使用するのなら軽量である程度コンパクトなコンピュータが望ましいと言えます。

「超軽量でバッテリーもちもよい高性能ラップトップ」はラップトップにおける頂点のひとつであり、Dell XPS13, hp Spectre13, Lenovo Thinkpad X1 Carbon, NEC LeVie Z, Panasonic Let’s Note SZなど多数の選択肢がありますが、どれもそれなりに高価なモデルです。 ひとまず使いこなせるわけでもなく、使い倒すわけでもないというのであれば、Lenovo ThinkPad 13は非常に優れた選択肢です。

モバイルラップトップで主流の13.3インチで、軽量かつバッテリーもちが良いモデルでありながら、Celeronプロセッサーモデルも選ぶことができ、5万円台という安価な構成が可能です。 ThinkPadシリーズの中でネーミングも異なり、存在感がありませんが、実は隠れた名品です。


  1. 同じ名前でもデスクトップ用とラップトップ用は全くの別物で、処理性能はデスクトップ用がはるかに上です↩︎

  2. なお、我が家ではビッグデータを扱っているため、実に92TB(92000GB)にもなる巨大なデータスペースが確保されています。運用には特殊な技術が必要で、家庭用ではまずみないものとなっています。↩︎

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