インターネットへの接続、契約、機器

まずは古典的方法を見る

契約

最も古典的なインターネット接続方法は「電話をかける」というものです。「ダイアルアップ接続」と呼ばれています。

このため、電話の契約が必要になります。これが一般的だった当時はNTTしか選択肢がありませんでしたので、NTTのと電話回線契約が必要です。

パソコン通信」の時代は「接続先に電話をかける」という方法でしたが、インターネットになり、「インターネットの接続を仲介してくれる業者に電話をかける」方式にかわりました。 このため、インターネット接続を仲介するための接続料が必要になります。

このことから必要な契約は

で料金は

のふたつがかかります。

回線

コンピュータで電話をかけるためのモデムという装置があり、これを使って電話線をつなぎます。

LAN

複数台でインターネット

古典的なダイアルアップ接続においては1台のコンピュータで電話をかけますが、電話回線は同時に1つしか接続を確立できないため、 1台のコンピュータがインターネットをしていると他のコンピュータでインターネットに接続することはできません。 コンピュータの数だけ電話回線が必要になってしまいます。

なお、この場合電話は通話中になるため、コンピュータ使用中は電話を受けることもできません。

「一家に一台」から「一人に一台」の時代になってくるとこれでは困ることになります。

これを解決する方法として、家の中にあるコンピュータ同士をつないでおく、という方法があります。 このようなひとまとまりのコンピュータが設置されている場所(サイトと言います)をネットワークでつなぐのが”LAN”です。

イーサネット(有線LAN)

コンピュータ同士をネットワークでつなぐには、NIC(ネットワークインターフェースカード)と呼ばれる機器と、イーサネット1ケーブルを使用します。

イーサネットケーブルの終端はRJ-45という規格で、電話線のケーブルに似ていますが、それよりも少し大きなコネクタになっています。

しかし通常のコンピュータに搭載されているNICはそれ同士をイーサネットケーブルで接続することはできませんでした。2 また複数台を接続するためにも「ハブ」と呼ばれる機器を使用します。

ハブはイーサネットケーブルが複数させるようになっており、コンピュータをハブに接続することでハブにつながれたすべてのコンピュータがネットワークでつながれます。 また、ハブとハブを接続することもできます。以前はどのポートでハブ同士を接続するかは決められていましたが、現在はAuto MDI搭載のハブが多く、それを気にする必要もなくなっています。

ハブには

という種類がありますが、普通に「ネットワークハブ」として売られているものは現在はほとんどがスイッチングハブです。

Wi-Fi (無線LAN)

無線は有線よりも普及したのは後になります。今や無線LANという言い方には馴染みが薄く、Wi-Fi(ワイファイ)といったほうがしっくりくるでしょう。

ちなみに、Wi-Fi Allienceによる認定規格が「Wi-Fi」なのですが、実際には現在あらゆる無線LAN(正確にはIEEE802.11規格の無線LAN)がWi-Fiと呼ばれています。

一見単純に見える無線接続ですが、現実には有線と比べ規格の数も多く接続条件も複雑です。 とはいえ、ここでは「無線LAN機器を使って無線(電波)でコンピュータ同士をつなぐこともできる」という程度の認識で十分です。

LANからのインターネット

LANの中にインターネットに接続している機器があれば、その機器を経由することで他の機器もインターネットとやりとりすることができます。

このような機器を「ゲートウェイホスト」と言います。「インターネットゲートウェイ」と呼ぶ場合もありますが、インターネットとのやりとりを仲介しているISPもまたインターネットゲートウェイであるため、インターネットゲートウェイという言葉を使うのであれば区別が必要かもしれません。

ブロードバンド型のインターネット接続

契約

ブロードバンドはADSL、あるいは光回線といった従来の電話線とは異なる方式をとることでより高速な通信を実現します。

この場合も回線と接続は別であり、電話と同様に二種類の契約が必要になります。

ADSL、光回線ともにそのほとんどはNTTが整えたインフラですが、現在はNTTが保有するインフラであっても間借りするような形で他業者が取り扱うことができるようになっています。 しかし、光回線においてNTT以外の業者がNTTのインフラを使ってサービス展開することができる「光コラボレーションサービス」に関しては、「NTTを装う」「インターネット接続に必須であるかのように見せかける」「強圧的な勧誘」といったことが常態化しており、わかりにくい上に問題となっています。

インターネット接続を仲介するISPはほとんどが従来と同様です。 ただし、“NURO光”3のようにISPの業者名とは別にサービスに名称をつけるケースが増えており、その対応関係がわかりづらくなっています。

NTT以外の回線業者としてはソフトバンク系、au系が大部分を占めるようです。

インターネット回線については物理的なものである上に、電話線のように既にあるものを使うわけではないため、場合によっては工事や回線引き込みが必要になります。 特に一軒家の場合はインターネット接続を想定して回線を引き込んでいない場合(特に古い住宅の場合)は必要となるでしょう。

回線

ブロードバンド用のモデムは一般にコンピュータに内蔵するものではなく、ADSLモデムやONU(Optical Network Unit, 光回線の場合)と言う専用の機器を使用します。 モデムは一般販売されているものは少なく、NTTの回線契約を使用する場合はNTTからのレンタルになります。

これはかつての黒電話のようなものですが、 機器はISPではなく回線業者による提供です 。また、 あくまでレンタルです。購入できるものはほとんどありません

モデム故障によるインターネット接続不良というケースは少なくないのですが、この場合モデムはレンタル品ですので回線業者に連絡すれば無償交換してもらえたりします。

一般的にモデムはルーターを兼ねています。 ルーターはネットワーク制御に特化したコンピュータで、2つ以上のネットワークに属することができ、ネットワークとネットワークを中継することができます。 モデムを兼ねているルーターであれば「上流側ネットワーク」がインターネット、「下流側ネットワーク」がLANになります。

このようなモデム兼ルーターはハブ機能を内蔵し、複数のイーサネットポートを有していることが多く、別途ハブを使わなくても複数台のコンピュータを接続できるのが一般的です。

なお、マンションの場合はVDSLと呼ばれる集合設備を経由してインターネットに接続されます。 VDSLから各家庭への回線引き込みインフラは電話回線を利用している場合が多く、この場合「電話線の差込口からモデムに電話線らしきものでつなぐ」という状態になります。

ケーブルテレビ・インターネット接続

契約と回線

ブロードバンド普及以前からケーブルテレビ(CATV)業者はケーブルテレビ回線を活用したインターネット接続を提供しています。

高速である上に安定性が高く人気がありますが、インフラ更新が難しいため時代と共に速度が相対的に遅くなってしまうのが難点でしょうか。

この場合、ケーブルテレビ業者が提供している回線でケーブルテレビ業者のさらなるサービスとして提供している形ですので、契約先は当該ケーブルテレビ業者のみになります。

契約内容は一派的にはケーブルテレビのオプションサービスであり、ケーブルテレビ契約にインターネット接続オプションという形が一般的ですが、テレビの契約なしにインターネットのみの契約も可能な業者もあるようです。

ケーブルテレビ・インターネット接続の大手業者としてはJ:COMがあります。

スマートフォン・携帯電話

契約と回線

Docomo, ソフトバンクモバイル, auといった携帯電話キャリアによって提供されるスマートフォン、携帯電話のデータ通信契約は、電話用の電波と共にデータ通信用の電波が提供され、これを利用して通信することができます。

必要なのはスマートフォン・携帯電話と、その契約内容を示すSIMカードで、こうした大手キャリアにおいてはこれらはセット販売されユーザーの手には完成された状態で渡されます。

この状態では「スマートフォンや携帯電話を使う」ということが自然とインターネット利用となり、特にインターネットの契約や用意について意識する必要はありません。

スマートフォンテザリングとモバイルWi-Fiルーター

契約と回線

通常のスマートフォン同様に機器(スマートフォン、あるいはモバイルWi-Fiルーター)はインターネット接続が可能な状態になりますが、 当該機器以外でインターネット利用をするためにその機器を無線LANルーターとして動作させる必要があります。

モバイルWi-Fiルーターは他の機器のインターネット接続を中継するルーターとしての機能がその機器の機能そのものであるため、自動的にWi-Fiによる中継を行います。

スマートフォンの場合はWi-Fiを他のWi-Fiアクセスポイントに対する接続(子機としての役割)に使用する場合もあるため、明示的にWi-Fiテザリングを有効にしてWi-Fiアクセスポイントとして機能させる必要があります。

場合によってはスマートフォンによるテザリングは別途料金を要するようです。

家庭内Wi-Fi

仕組み

家庭内でのWi-Fi(無線LAN)は基本的に他の有線インターネット接続(ADSL, 光回線, ケーブルテレビなど)で家庭まで到達したインターネット回線に対して無線接続を中継することで実現します。

「インターネット契約にWi-Fiオプションをつけていない」という話をよく耳にしますが、この場合「回線契約上Wi-Fiが必要」なわけではありません。 これは、無線を無線で中継するような別機器の設置、あるいは無線LAN機能つきモデムの貸与でしょう。 そしてそのようなものは通常必要ありません。

標準で設置されているモデムにWi-Fi機能がないのであればWi-Fiルーターを使うことで有線のLANに無線LANで流入することができます。 Wi-Fiルーターは上流になるLANに接続するための有線ネットワーク端子(イーサネット端子)と無線LANの両方を持っており、両方を中継することができます。4

これを設置することで無線LANを構築し、さらに上流イーサネットを通じてインターネットに接続することができます。 通常、上流イーサネットはインターネットへのゲートウェイとつながるようにします。

この機器だけを設置してもインターネットに到達する経路がないため、この機器だけでインターネット接続ができるわけではありません。 それとは別に光回線などのインターネット接続手段を用意する必要があります。 Wi-Fiルーターはあくまでそのようなゲートウェイに接続します。

もう一度復習しましょう。

  1. インターネット回線(ADSL, 光回線, ケーブルテレビ等)
  2. モデム機器
  3. 有線ルーター (またはモデム機器に搭載されているハブ)
  4. Wi-Fiルーター (有線ルーターとWAN側イーサネットポートを接続)

Wi-Fiの動作方法

Wi-Fiルーター

有線ネットワークとは異なるネットワークとしてWi-Fiネットワークを構築します。

Wi-Fiルーターは経路上の中継機器となります。 有線とWi-Fiのネットワークを分離する必要があるときに使用します。

Wi-Fiアクセスポイント

有線ネットワークと同一のネットワークとしてWi-Fiネットワークを構築します。 有線ネットワークにWANとLANがある場合は、LAN側と同一になります。

有線LANと無線LANについて、接続しているのが有線か無線かを意識せずに接続されているコンピュータをすべてローカルに繋がれているものとして取り扱うことができ、良好な利便性を得ることができます。

多くの場合はルーターとして機能させるよりもアクセスポイントとして機能させるほうがイメージに近い動作を得られるでしょう。 また、アクセスポイントとして動作させるほうが必要な設定がすくなく、取り扱いが容易です。

多くのWi-FiルーターはWi-Fiアクセスポイントモードを搭載しており、設定によりアクセスポイントとして動作させることができます。 稀ですが、アクセスポイントとしてのみ動作する機器もあります。

Wi-Fiエクステンダ

Wi-Fiの電波を受信し、増幅して発信する装置として機能させるものです。 既にWi-Fiネットワークがある状態で、電波が届きづらい場所がある際に電波を中継するために使用します。

今回のような要件では使用しないモードです。


  1. イーサネットは有線LANのことですが、これはファンタジー作品に登場する架空の物質エーテルに由来する名称で、コンピュータの世界きっての「中二心をくすぐる単語」です。↩︎

  2. Auto MDI / Auto MDI-Xという機能があり、これが搭載されていれば接続することができます。1000Mb(1Gb)のLANから仕様としてAuto MDI/Auto MDI-Xは必須となったため、古い規格のものでなければコンピュータ同士でもイーサネットケーブルによる接続が可能なはずです。↩︎

  3. NURO光はSonyの子会社であるSo-netによるサービスの商品名です。↩︎

  4. 実際には「上流用イーサネットポート+LAN用イーサネットポート+LAN用イーサネットハブ+Wi-Fi」という3つ以上のネットワークを持つ機器のほうが一般的です。↩︎

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