USB Type-C 3.5mmステレオヘッドセット アダプタのおはなし
USB Type-Cについて
USB Type-CはUSB 3.1から採用された新しいUSB端子です。
従来、USB端子は端末(コンピュータ)側のAと機器(デバイス)側のBに分類され、通常サイズのほかmini, microの計3サイズがあり、ABを含めると6種類のポート/プラグがありました。 以前一般的だったのはPC側がUSB A(2.0/3.0)、機器側USB 2.0 microBです。 なお、A型に関しては2.0, 3.0同形状ですが、Bについては2.0と3.0で形状が異なります。3.0のB端子はほとんど目にすることがありません。
Type-C端子は2.0 microBと同程度のサイズでA/Bの区別がなく、端末側、機器側ともに利用されます。つまり、両側が同じ形状の端子を持つケーブル1が考えられるということです。 これに伴い、通常利用される端子はUSB Type-AとUSB Type-Cに限られるようになりました。
従来、独自のLightning端子を採用していたiPhoneやiPadでも採用されるようになり、スマートフォン全般で広く使用されるようになりました。 また、パソコンでも特にラップトップではUSB Type-Cを採用するケースが多くなっています。
なお、「Thunderbold3」という端子はUSB Type-Cと互換性があります。
スマートフォンのオーディオ端子
オーディオ端子は主にフォーンと呼ばれるTS/TRS/TRRSというものが使われます。 これは通常6.3mm(1/4インチ)ですが、近年はこの6.3mmの標準コネクタが使われるのは楽器や音響機器くらいのもので、イヤフォン、ヘッドフォン共に3.5mmの「フォーンミニ」と呼ばれるものが使用されます。 (他にも2.5mm, 4.4mmが存在します)
TSはプラグに1本だけ線(絶縁リング)が入ったもので、2極のモノラル用のものです。 ステレオ用のTRSは2本線があり、3極のステレオ用です。3.5mm TRS(TRSミニ)は「ステレオミニプラグ」と呼ばれたりします。
TRRSは3本線がある4極で、主にコントロールを追加したり、マイクに使用されたりします。 一般的にはヘッドセットが4極になっています。
スマートフォンではマイク端子を別に用意することが難しいため、一般的に4極のTRRSジャックが採用されています。 ただし、3極のTRSプラグが接続された場合もそれを機器側が認識でき、問題なく動作するようになっているのが一般的です。
これはちょっと話が複雑な部分があります。 というのも、4極端子はCITA規格(先端からLeft, Right, Ground, Microphone)とOMTP規格(Left, Right, Microphone, Ground)の2種類があります。
機器側が何もしないと仮定すると、TRSはLeft, Right, Groundになっており、OMTP規格の4極ジャックにTRS3極プラグを差し込むことは問題ありませんが、 CITA規格4極ジャックにTRS3極プラグを差し込むことには問題があります。 しかし、現在一般的にはCITA規格が採用されており、CITAジャックを持つ機器はTRS3極プラグが差し込まれることを認識して対応するのが一般的です。
こうしたことから3極、または4極、あるいはCITA/OMTPといった問題を気にする必要はあまりありません。 しかし、稀に(特に専用機器など安価で何かに特化されたものなどは)この違いにより適切に動作しないことがあります。
オーディオ端子のないスマートフォン
2016年以降、スマートフォンに3.5mmジャックが存在しないものが増えました。
これは主にはUSB Audio Device Class 3.0によって規定された、USB Alternative Modeを利用したアナログ音声転送が可能になったことにより、「USB Type-C単独でオーディオが対応できる」ようになったためです。 このようにまとめる理由は、特に3.5mmジャックはUSB Type-Cと比べて厚いため、スマートフォンを薄くする上で支障で出るからです。
現在のスマートフォンには次の3つのタイプがあります。
- 3.5mm CITA TRRSジャックがある。ヘッドセットをそのまま使うことができる
- 3.5mmジャックがなく、USB Audio Device Class 3.0に準拠したUSB Type-Cによる音声出力/入力ができる
- アナログ音声出力がない
これらについて説明していきましょう。
スマートフォン側について
TRRSジャックあり
これは従来と変わらない、普通の形態です。 3.5mm 4極のヘッドセット、あるいは3.5mm 3極のイヤフォン/ヘッドフォンなどを利用することができます。
USB Type-Cからアナログ出力
従来の3.5mmジャックをUSB Type-Cの中に組み込んでしまったようなものです。
アナログ音声自体は出ていますから、口を変換すればUSB Type-C経由で音声を取り出すことができます。
アナログ音声がない
特にタブレットで多い形式です。
有線接続を「古い、使われない形式である」とみなし、有線イヤフォン/ヘッドフォンを使えないようにしてしまっています。
このタイプではBluetooth接続の無線ヘッドセットを使うことが前提となっています。
ヘッドセット/アダプタを利用する
3.5mm接続のものを利用する
3.5mmジャックがあるものに関しては、通常どおり3.5mmのヘッドセットを利用します。
アダプタを使用する
USB Audio Device Class 3.0を利用したオーディオを扱う機器については、スマートフォン内部にはオーディオ用のチップがあり、そこで音声を扱うことができます。 単に、それを3.5mmジャックを利用して取り出すことができないだけです。
そこで、アダプタを使ってUSB Type-Cからオーディオを取り出し、3.5mmの形状に変えてしまえば従来どおり3.5mmのヘッドセットを利用することができます。
これは、USB機器として最低限のものはあるものの、基本的に何か処理をするようなものではなく、あくまでUSB Type-Cと3.5mmの「形状の違い」を変換するためのものです。 必然的に、端末はUSB Type-Cからオーディオが出ている必要があります。
USB DACを使用する
USB DACは端末から見た場合にはUSB周辺機器に見えます。これはオーディオ装置であり、アナログ音声への変換はオーディオ装置によって行われます。 一般的にDACはコンピュータ内に搭載されていますが、USB DACはこれを外部に設置するものです。
スマートフォンで利用できるUSB Type-C端子を持つUSB DACは様々ありますが、ここで言及したいのは アダプタのようにUSB Type-Cと3.5mmを変換するケーブルに見えるUSB DAC です。
これは、前述のアダプタと見かけ上ほとんど区別がつきません。商品写真にUSB端子付近にチップが搭載されているようなものがあることが多い、というのが識別点でしょうか。 これ自体が周辺機器になるため、処理用のチップが必要になります。
USB DACを利用すればアナログ音声を持たない端末でもオーディオを扱うことができます。 一方、アナログ音声を持っていたとしても、内蔵されているDACを使用せずにUSB DACを利用することで音声を扱えますから、こちらのほうが「動かない可能性は低い」と言えます。
では、こちらが推奨されるのかというとそんなことはありません。
- 安価のものや、非常に狭い場所に押し込まれている音声チップは一般的に音質がよくない
- 故障や無用なトラブルを抱える可能性が上がる
- チップが搭載されている分高価になる
動作する可能性は高いでしょうが、それでも「DAC搭載だからこそ動作しない」ということも全くないわけではなく、デメリットも小さくはありません。
Bluetoothヘッドセットを使用する
最近は「有線なんて時代遅れ」という風潮ですので、最もこれが好ましいのかもしれません。 スマートフォンでBluetoothを搭載していないことは稀で、そもそもメニュー内にBluetoothのオンオフ機能があるかどうかで識別できるため、無駄打ちをする必要がなくなります。
Bluetooth接続の場合、aptX, aptX HD, LDACといったコーデックへの対応が低遅延に貢献します。
このあたりの技術的な解説は非常に難しい話になってしまうので省略しますが、これに「端末側と機器側両方が対応している」という条件が満たせばこうしたコーデックの利用が可能です。
それ以前のコーデック(例えばSBC)を使うとしても通常利用ではそれほど気になるものではありませんが、ゲームなどをプレイすると目立って遅延を感じることがあります。 aptXやLDACを使用する場合、音ゲーでもいくらかのタイミング調整を行えば問題なくプレイできるくらいですので、あまり支障はないでしょう。
また、Bluetoothヘッドセットは旧来、「電池もち」という問題があり、「一日おでかけに使うとバッテリーがもたない」といったこともありましたが、Bluetooth version.4からBLEという機能により消費電力が削減されています。 このことから、少なくとも 「BlueToothのバージョンが4以上で、aptXに対応したヘッドセット」 を選択すれば目立った問題は発生しにくく、 「aptX/aptX HDに加えてLDACにも対応していればより良い」 と考えられます。
一方、Bluetoothヘッドセットを選択することのデメリットは以下です。
- 汎用性に乏しい。特にパソコンやオーディオ機器との間では聴くことができない、少なくとも好ましくない手間を必要とする可能性がある
- 音質において最良ではない。どれほど良いBluetoothヘッドセットを選択したとしても構造上音質劣化は避けられず、有線接続のほうが良い条件で再生できる
- バッテリーによる煩わしさから脱することができない
- 特にインイヤー型は重量があるため、耳をひっぱられる感覚が強い
- 全体的に高価である
Bluetoothオーディオレシーバーを使用する
Bluetoothオーディオレシーバーは、Bluetooth機器として端末と接続することができ、また有線(3.5mm TRS、あるいは3.5mm TRRS)でイヤフォンやヘッドセットと接続することができます。
まず、Bluetoothオーディオレシーバーは目的によっていくつか種類があることに注意してください。 特に、スピーカーと接続するためのもの(据え置きで使用するもの)に関してはジャックがRCAだったりする場合もありますし、バッテリーを搭載しておらず持ち歩くことができないかもしれません。 こうしたものの主たる目的は、オーディオデッキやカーステレオと有線接続し、オーディオソースをスマートフォンにすることです。
イヤフォンを接続することを目的としたものとしては例えばFiio μBTRなどがあります。 Amazonではカテゴリ名が「ワイヤレスオーディオレシーバー」になっています。
デメリット自体はBluetoothヘッドセットとあまり差はありませんが、有線ヘッドセットやヘッドフォンなどを使うことができることは大きなメリットがあります。つまり、
- 有線接続可能であるデバイスで聴く場合はレシーバーなしで接続できるため、音質劣化やバッテリー問題が解消される
- Bluetoothヘッドセットと通常のイヤフォンの両方にお金をかけることをしなくても、ひとつの「良いヘッドセット」をどちらでも使うことができる
- レシーバーはクリップ留めしたりできるため、耳への重量感はあまりない
USBヘッドフォンについて
ヘッドフォン、ヘッドセットの中にはUSB端子を持つものがあります。 これもざっくり2種類が存在します。
ひとつは単純に端子がUSB Type-Cになっているものです。 これは、端末が「USB Type-Cからアナログオーディオを出す」ものであることが必要です。
もうひとつは、ヘッドフォンがDACを内蔵しているものです。
どうやって識別しますか
以上の内容をヒントとして検索で知る方法もありますが、なかなか困難です。
最も良い方法は、確実に単純なアダプタであるもの(例えばELECOM AD-C35)を購入しておき、このアダプタと3.5mm接続のヘッドセットを持参してショップに行き、ショップで当該端末において接続して音声が出るかどうかを確認した上で購入することです。
USB Type-C/3.5mm CITA 4極アダプタは1000-2000円程度のものですので、ひとつ持っておくと良いかもしれません。
現状、確実性を考えるなら「無駄な購入を全くしない」というのはかなり高度な知識と慎重な調査を必要とするため難しく、確認するための最低限のものを保有しておくのが効率的でしょう。
Type-C以外で両側端子が同じ形状のものはUSBの規格に反した製品です。↩︎